2024年現在の現行Big Muffには、大きいケースの無印(以下BigBox)と中くらいのLittleと小さいNanoの3つのバリエーションがあります。
中身は同じとされている3機種ですが、音が違うというウワサもあります。実際にはどうなのか、すべて新品で購入して比較してみました。
無印(BigBox) |
Little |
Nano |
中身は同じなのか
BigBoxの中身
基板のバージョンはEC-3003 REV_F と書いてありました。
Littleの中身
こちらの基板はEC-D2rH と書いてありました。
Nanoの中身
こちらの基板はEC-D107 Rev.A と書いてありました。
回路図
それぞれの基板を目視でわかる範囲で回路図にしました。
BigBox |
中身の違い
共通していること
- トランジスタはすべてBC550
- 回路と部品の定数はほぼ同じ(違う点は下記)
BigBoxの特徴
- 可変抵抗が24mmの大きいタイプ
- ジャックがパネル取付タイプ
- 片面基板で空白箇所はベタアース
- 電源回路のローパスフィルターがBigBoxのみ2段重ねになっている、抵抗は100Ωのカーボンフィルム抵抗
- クリッピングダイオードとコンデンサーの位置がBigBoxのみ逆になっている
Littleの特徴
- 可変抵抗が16mmの中くらいのサイズ
- ジャックが基板取付タイプ
- 両面基板で裏側の大部分がベタアース
- 電源回路にフェライトビースが使われている、ローパスフィルターは1段で抵抗は120Ωのチップ抵抗
- SUSTAINの可変抵抗がLittleのみAカーブ
Nanoの特徴
- 可変抵抗が12.5mm(実測)の小型
- ジャックが基板取付タイプ
- 両面基板で裏側の大部分がベタアース
- 電源回路にフェライトビースが使われている、ローパスフィルターは1段で抵抗は120Ωの金属皮膜抵抗
- 他2機種ではディスク型セラミックコンデンサーの部分に積層セラミックが使われている
総じてほぼ同じ回路だが、LittleとNanoは特によく似ている。
差があるとすれば、ベタアースによる寄生容量の差があるかもしれない。
片面基板のBigBoxが最も寄生容量が少なく、両面基板かつNanoより面積が大きいLittleが最も寄生容量が多そうだ。
また、BigBoxのみ電源回路に100Ωの抵抗が2本直列に入っており、他2機種よりも電源のインピーダンスが高い。
音は同じなのか
波形は同じなのか
1kHz 1Vppのサイン波を入力し、オシロスコープで波形を比較してみた。
なるべく同じ波形になるよう、エフェクターのツマミを調整した。
BigBoxの波形 |
Nanoの波形 |
青線の角ばった波形がエフェクト音の波形で、凸の左側が高域の成分右側が低域の成分となっている。
真ん中にへこみがあり、ドンシャリであることがうかがえるが、それぞれ微妙にへこみ具合が違う。
BigBoxが一番へこみが少なく比較的フラットに近い(ミッドが出ている)のに対し、Littleが最もドンシャリで、NanoはLittleよりもわずかにミッドが多く出ている。
前述の寄生容量の差でフィルターの特性が変化しているのではないか、と思うが、検証の仕方がわからない。
ともかく、少なくとも何らかの理由でフィルター特性に差があることは確かなようだ。
音は同じなのか
サウンドチェック動画を作成しました。
ギターの音をループステーションで録音し、ループ再生音を逆DIに通してから各Big Muffに繋いでいます。
後述のBigBoxの音に近付けた改造Nano Big Muffの音も収録しています。けっこう近い音になっていると思うのですが、いかがでしょうか。
NanoをBigBoxの音に近付ける
やはり音の違いがありそうです。特にBigBoxは音の違いが顕著で、ズガーーッ!っという感じの雑味が多いルーズな音の印象が個人的にはしました。力強さと開放感を感じる良いサウンドです。一方NanoとLittleはタイトでシャープな印象でした。
そこで、Nanoを改造することでBigBoxのような音が出せるのか実験してみました。
電源のローパスフィルターをBigBox仕様にする
まず、回路上の一番大きな違いである電源のフィルターをBigBoxと同じ2段重ねに改造しました。
この状態で同様に波形を測定しましたが、変化はありませんでした。
少なくとも、フィルター特性には影響がないことが分かりました。電源ノイズには強くなったかと思います。
あとは、電源インピーダンスが上がったことで入力信号に対するレスポンスやコンプ感にわずかな差が出るかもしれないです。ただ、自分で聴いた感じでは差はわからなかったです。
フィルター回路をいじる
フィルター特性の差ならば、フィルターの定数をいじるのが早そうです。
いろいろ試した結果、ハイパス側のコンデンサー(先ほどの回路図ではC3の0.0033uF、実際の基板ではC9の332と書いてあるコンデンサー)に並列に0.001uF=1000pFを繋ぐとかなり近い波形になりました。
素直にコンデンサーを付け足せば改造終了だったのですが、私はここで余計な回り道をしました。
抵抗側で調整したい
コンデンサーの容量を変える代わりに抵抗の値を変えてもフィルター特性は変化します。
値の違うコンデンサーを並列に繋ぐと反共振という現象が起こる、と何かで読んだことを思い出し、抵抗のほうで調整しようと考えた私は、チップ抵抗を除去して手持ちの抵抗に差し替える実験をしました。
除去 |
抵抗の値を差し替えることでドンシャリのへこみは埋まったのですが、へこみの周波数が微妙に変わってしまい同じ波形になりませんでした。
さっきのほうがよかった…… |
抵抗での調整を諦め、コンデンサー並列作戦に戻すことにしました。
外したチップ抵抗と同じ27kΩを持っていなかったので、手持ちで一番近い33kΩを使い並列に繋ぐコンデンサーを680pにすることで近い波形にすることが出来ました。
もし同様の改造をされる方がいらっしゃれば、前述のコンデンサーに1000pFを並列に繋ぐだけでよいと思います。電源フィルターの改造はやらなくても、かなりBigBoxに近い音になると思います。
実際の音は、前章「音は同じなのか」に貼り付けました動画に収録されております。
BigBoxのズガーーッ!という音がけっこう再現出来ていると思うのですが、いかがでしょうか。
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